『バベル』シナリオまとめ~ドクター/源石/魔王/文明の存続(アークナイツ大陸版|考察&一部翻訳)
【注】本記事は大陸版ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。一部、大陸版のシナリオを翻訳していますが、誤訳の可能性もある点を予めご留意ください。
本記事は大陸版イベント『バベル』のシナリオについて、ドクターや源石といったアークナイツ世界の根幹に関わる設定を中心に考察をまとめたものである。『斬首作戦』~『魔王、文明の存続』の項目はシナリオの翻訳ダイジェストとなっているため、注意されたし。また、補遺にてエンドフィールとの関わりについても憶測を交えて触れている。
旧人類が残した技術
便宜上、ドクターやプリースティス、フリストンといった動物的な特徴を持たない人類を「旧人類」と記載。アークナイツのシナリオ上で旧人類が活動していた頃の、具体的な年数が確認されたのはイベント『孤星』にて。
このシステムの操作方法を知っているのは君だけだ。どうかこのねじ曲がった……476万5403日間のデータを削除してくれないか。
『孤星』CW-ST-3 残された人
『孤星』の時間軸である1099年から約13,055年前から、保存者は起動した。
イベント『バベル』においては、ドクターが目覚めた際に次のようなPRTSの音声が流れている。
检索:保存者……无信号。
检索:深蓝之树……无信号。
检索:天堂支点……无信号。
检索:(未知杂音)……无信号。最新更新:四百七十五万五千九百五十四天前。
『巴别塔』BB-ST-2 在疲惫中苏醒
PRTSの最終更新日である約13030年前、ドクターはコールドスリープにつき、1090年の夏に目覚めた。逆算すると、保存者が起動した16年後にドクターがコールドスリープについている。ドクターの目覚めに際して、PRTSは「保存者」「紺碧の樹(深蓝之树)」「天堂支店」の信号を確認していることから、これらもまた旧人類の技術により生み出された産物であると再確認することができる。
それぞれ軽く振り返ると、「保存者計画」は遥か昔に生きていた人々を生命維持装置である石棺の中へ”保存”し、いつの日から災いが消え去った後で復活させるというのもの。長きに渡る時間の中でエネルギーを消耗してしまい、ただの死者の棺となってしまっている。
紺碧の樹については、統合戦略『ミヅキと紺碧の樹』のエンド4にて語られた「惑星改造計画」と関わりがある。フリストンはエーギルたちに関連して「海の怪物」の暴走について語ったが、恐魚やシーボーンの元となったファーストボーンも「移住」「成長」「存続」「繁殖」といった権能…プロジェクトを抱えていることから、元を辿れば惑星を住み良いものへと変えるための技術であったと言える。
「天堂支店」についてはこれまで言及はないが、天堂は日本語に訳すと「楽園」であることから、ラテラーノにおける「アレ」が候補の一つとして挙げられるだろうか。『孤星』にてフリストンはサンクタに光輪と翼がある理由について、指揮システムを持つ自我のない機械がサンクタへ与えたものだと説明している。
いずれも現実世界の我々が未だ再現しえない高度な技術であるが、これほどの文明を築いた旧人類でさえ崩壊の道は避けられなかった。
滅びゆく旧人類の文明を存続すべく、研究者であったドクターが推し進めたのは「源石計画(源石计划)」。ドクターこそが「源石の創造者(源石的缔造者)」であり、文明を存続させるための手段として、源石を生み出した。
「源石計画」は一朝一夕で実現するものではなく、気が遠くなるほど膨大な時間をかけて完成するもの。いつの日か源石が新たな世界を構築してくれることを夢見て、ドクターは石棺の中で眠りにつく。
源石の性質について
アークナイツにおいて源石は鉱石病の原因であり、天災を引き起こす諸悪の根源としてこれまで扱われてきたが、実はこの源石こそが文明を存続させるための鍵であった。源石には宇宙を内包する(※CN:内化宇宙)性質が備わっており、膨大な情報を取り込んでいくことで新たな世界を生成する。
源石。
『巴别塔』BB-6 灯火闪烁不定(筆者訳)
将是宇宙大爆炸前的第一缕光。
それはビッグバン前に始まりの光芒となるのだ。
从智慧生命开始,再到寰宇中的光亮与群星的漩涡。在源石的自我复制与转化的进程里,最终,连时间都将不复存在。
知的生命体から始まり、遍く世界の明光と星群の渦の中へ再び至る。源石の自己複製と変容の過程で、やがて時間さえも存在しなくなる。
她说,唯有此法,唯有让源石铺满大地,唯有让物质与时间,潮汐与惊叹,光与哭声尽数归于浩瀚的信息之海……我们才可寻得变化、突破,乃至避开终结的命运。
源石を大地へ広げることによってのみ、物質と時間、潮汐と驚異、光と哭声の全てが広大な情報の海へ帰することによってのみ……私たちは変化し、打ち破り、さらには終わりの運命を避けることができると、彼女はそう言った。
どれほど力を尽くそうと、破滅の事象からは逃れることができなかったドクターたちは、源石を通じて世界を再構築しようと試みる。全ての情報を取り込み、増殖させた源石によって世界を創造し、新たな生命を育むことが「文明の存続」に関わるプロジェクトの目指すところである。
動物の特徴を持つ先民(エーシェンツ)や神民たちは、タロⅡ(※エンドフィールドの舞台)からテラヘ移動してきた生命体であった。元は別の形態をしていたが、源石は彼らを旧人類に近しい見た目へと作り変えた。
……在沉睡岁月中,我们的家园在毁灭中孕育了新生。
『巴别塔』BB-7 阴影显现(筆者訳)
眠りについていた年月の中で、私たちの郷土は破壊の中に新たな生命を誕生させた。
源石是他们的引航人,将来自塔卫二的生命,塑造成与我们相近的模样。
源石は彼らの導き手であり、タロⅡから来た生命を、我々に似た容貌へと作り変えた。
祖先となる生き物たちは航船によって「転送門(CN:传送门)」を通り、瓦礫だらけの荒れ地であったテラへと至る。
源石の持つ性質について、別の観点から補足したい。
だが、源石はかつてあった無数の答えの一つであり、統一を意味するものだ。そしてもう一種の存在の状態を意味するものでもある。それは一面のソラリスの海だ。すべては無秩序に存続するんだ。
『孤星』CW-ST-3 残された人
フリストンが源石を「ソラリスの海」だと説明していたが、これはスタニスワフ・レムの小説『ソラリス』に由来する言葉である。大陸版の四周年特別生放送にて、海猫氏が『ソラリス』の世界観を説明していることからも、このSF小説を参考にしながら世界観を組み立てていることは想像に難くない。
レムの小説においてソラリスは、海のような形状をしている、惑星を覆い尽くす知的生命体だ。人類はソラリスの特性を掴むために様々な実験を試みる。例えば、電子装置を通じて刺激を送る取り組みに対して、ソラリスはその装置を実験するかのように大小様々なインパルスを送るが、一度与えた反応に対してはまるで情報を取り終えて興味をなくしたかのように沈黙する。
また、ソラリスはありとあらゆる情報を読み取り、再現する能力を持っている。宇宙船にいる乗組員の情報を読み取り、その記憶にある過去の人物を再現して送り込んでいる他、主人公がソラリスの海へ降り立った際には古代都市の廃墟を再現して出迎えた。
源石もこれに近い性質を持っていると言って良いのかもしれない。イベント『バベル』の時間軸において「文明の存続」の権能を持つテレジアは、アーツとは別の技術で源石を無害な花へと転化させ、旧人類の記憶を持つドクターを驚かせた。
来自源石之中的信息,来自内化宇宙的反转……你们对源石的研究,已经到了这一步?什么时候……
『巴别塔』BB-4 悠长的旅途(筆者訳)
源石中の情報、内包された宇宙の反転……。君たちの源石の研究は、もうここまで進んだのか? いつの間に……。
語弊を恐れず言うなれば、源石は文明の情報を圧縮したファイルとでも表現することができるだろうか。
アークナイツ本編の時系列において、「源石計画」は未だ完成に至っていないものの、いずれ源石は取り込んだ情報を再現することとなる。イベント『バベル』における描写から察するに、源石は旧人類の情報(いわばDNA)を既に取り込んでいるため、その情報を元にタロⅡ由来のエーシェンツや、元々テラに住んでいたティカズ(後のサルカズ、サンクタ)たちを今の姿へと変えたと言えるだろう。
サルカズたちの口にする「魔王」としての権能は元々、源石が取り込んだ情報を読み取り、操作する技術となる「文明の存続(DWDB-221E)計画」は「源石計画」と並行するプロジェクトの産物であった。
「『黒い王冠』は?一部現象にともなう視覚効果を直感的に言い表すと、まさにそういう感じでしょ。」
アーミヤモジュール「DWDB-221E」
(中略)
悪い報せもいくつか入ってきてはいるが、無数に連なる過去の歴史がそうであったように、どんな苦境も人類は乗り越えていくのだろう。
「こう名付けるのはどうかしら。」
「――『文明の存続』計画。」
アーミヤのモジュールに記載されているのは、そのプロジェクトの初期実験が初めに成功した描写だ。
こうして動き始めた「源石計画」と「文明の存続計画」であるが、それは旧人類にとって思わぬ副作用を生じることとなった。鉱石病、天災、そしてそれを取り巻く人々の争いである。
バベルの理想とカズデルの現実
続いて、ドクターが目覚める前の状況について整理したい。
898年、「文明の存続」は二人のサルカズ兄妹…テレシスとテレジアの二人を同時に選んだ。テレシスは自らが希望をもたらす存在に相応しくないと語り、黒き王冠をテレジアへと授ける。テレシスが道を切り開き、テレジアが道を示す…それが当初抱いた理想だった。
1030年、テレシスはガリアやウルサス、ヴィクトリア、ウルサスといった大国が戦争を繰り広げ、傭兵として消耗されるサルカズたちの未来を憂いて、軍事委員会を立ち上げた。
一方、テレジアはその先を見据え、人種や国家の境界を超えた理想郷をカズデルに築きたいと願い、カズデルの街の設計をしていたケルシーと共に立ち上げたのがロドスの前身「バベル」である。
テレシス、妹の語る理想郷をカズデルに作り出すのは時期尚早であると考えたものの、当初は彼女の決断を支持し、テレジアが遠き未来を見据えるならば、自らは目先の問題を解決しようと決意した。しかし、長きにわたって蔑まれてきたサルカズにとって、他種族への疑心はそう簡単に拭い去れるものではなかった。
1068年、ガリアの戦争によって多くを失ったリターニア選帝侯の一人は、領地拡大を目論んでカズデルへの侵攻を開始した。カズデルで活動するバベルのメンバーには、鉱石病を治療する医師としてリターニア出身の女性もいたが、サルカズの一人がリターニアからの侵略に加担する者として彼女を疑い、不幸にもその命を奪ってしまう。こうしてカズデルにおいて負の感情が次第に蓄積されていく。
1086年、リターニア選帝侯の侵略によって始まった戦争は終わることなく、次第にカズデルの人々は疲弊していった。
過激なサルカズの一部は長引く戦争の原因を他種族に見出し、サルカズ以外の種族を抱えるバベルこそが諸悪の根源であると主張。カズデルは、軍事委員会を支持し他種族を排除しようとする派閥と、種族の垣根を超えた理想郷を作るというテレジアの理想を掲げるバベルを支持する派閥とで二分されることになる。
決定打となったのが、バベルの教師と生徒の父親との間で起こった殺傷事件だ。口論から始まったいざこざは、やがて大きな暴動へと発展。バベル事務所の外壁は怒り狂った民衆によって打ち込まれた砲弾で破壊される。王庭軍でさえ、これを鎮圧することは叶わなかった。
混乱の中で一人、また一人と命が失われていく状況を憂いてテレジアは、バベルを率いてカズデルの移動都市から出ていくことを決意。理想主義者テレジアと現実主義者テレシス。カズデルが生み出した動乱によって、遂に二人は袂を分かつこととなる。
なお、8章以降のメインシナリオにおいて、様々なサルカズの純血種から成る王庭たちは概ねテレシス率いる軍事委員会に付き従っているが、バンシーの王庭である菈玛莲(Logosの母)は例外であった。この出立に際して、テレジア寄りの思想を持っていた彼女は息子をバベルへ託している。
目覚め
カズデルの移動都市から離れたテレジアはバベルのメンバーを率いて荒野を彷徨うことになるが、あるときケルシーはレムビリトンから見つけ出した船の存在を伝えた。現在のテラ文明では考えられないほど高度なテクノロジーを有するその遺産こそ、後にロドス本艦となる船である。
ケルシー、別名「Ama-10」は旧人類の計画によって生み出された存在である。しかし、悠久を超えるようなあまりに永き時間の中、テラで巻き起こる様々な事態を受け、ケルシーは次第に消耗していく。
変わりゆく世界でただ一人、奮闘する彼女の様子はモジュールにも描かれている。
彼女はほとんどの時間を、テラが自ら辿ろうとする破滅の運命を避けさせるため、彼らが安全なほうへ舵を切るよう導くために使ってきた。それだけで彼女はすでに、身も心も憔悴しきっていた。彼女は全知全能の生命などでは決してない。だがそれでも、世界のすべてへ手を差し伸べることを自らに課し続けていた。彼女の抱える使命が公正であったことなどなかった。急がねば。手段を選んではいられない。
ケルシーモジュール「Mon2tr」
そんな彼女にとって、初めて対等な関係を築けた友人(CN:第一位能与她平等交流的挚友)こそが、テレジアであった。ケルシーはバベルを率いるテレジアに協力を続ける。
旧人類の計画とは異なる現在のテラの状況を鑑み、そして自らに「ケルシー」という名を授けてくれた存在とのやり取りを思い返し、葛藤の末ケルシーは、とある重大な決断をくだす。
それは、コールドスリープについている旧人類、”ドクター”を目覚めさせることだった。
本来、彼女は「源石計画」と「文明の存続計画」をはじめとするプロジェクトを見守るバックアップシステムとしての役割を担っているため、「源石計画」が無事に成功した暁に、創造された新たな世界でドクターを起こすことが当初の計画であったと言えるだろう。今回の決断ばかりはケルシーも、合理的な選択とは言えないと口にする。
それでも、ケルシーはかつて自らに語りかけてくれた言葉を思い出し、自らが導き出した答えを優先した。
去寻找生命的痕迹,去寻找希望与未来。
生命の痕跡を、そして希望と未来の兆しを探し出しに行くんだ。凯尔希……自己去得出答案吧。
ケルシー、自分なりの答えを見つけなさい。去找到你自己。
『巴别塔』BB-ST-2 在疲惫中苏醒(筆者訳)
君自身を見つけ出すんだ。
こうして目覚めたのが、バベル時代のドクターである。
ドクターの葛藤
テレジアとの交流、そして独自の変化を遂げたテラの世界を目の当たりにし、感動と郷愁に浸るドクター。同時に、鉱石病や天災、感染者への差別、戦争といった様々な苦難が大地に満ちていることも知る。当初の想定を越えた事態にドクターは、源石が文化や生活、そしてテラの環境へどのような影響を与えたのかを正確に理解すべく、旅に出る。
あるとき、ドクターはレムビリトンへと赴き、事故で大破した車からコータスの少女アーミヤを救い出した。事故によって両親は既に亡くなっており、彼女自身は鉱石病に感染した状況に、ドクターは胸を痛める。
幼きアーミヤをバベルへと引き取ったドクターは彼女の病気を治すべく、自らの血液を原料として鉱石病の抑制剤を作り出す。ドクターの身体は、どれだけ源石で傷つけられようとも決して感染することがない。その理由についてドクターは、源石が単なるエネルギー計画だった頃の保険だとケルシーに語った。
8章のラストにて、ケルシーはドクターから血を抜き、倒れたアーミヤへ注射したことで鉱石病の症状を抑制する描写があった。
上記の通り、これはバベル時代のドクターからもたらされた知恵である。
そうした日々を送るうちに、軍事委員会とバベルとの間で燻っていた火種は大きく燃え上がる。
1091年、ヴィクトリアがカズデルの軍事委員会をロンディニウムへ招いた。再びサルカズたちがテラ列強諸国の監視下に置かれることを意味と悟ったテレジアは、サルカズたちが戦争に巻き込まれることを防ぐべくヴィクトリアへ赴く。
テレジア不在の中、軍事委員会を指示するサルカズたちはバベルへ攻撃を仕掛けた。逼迫した状況にドクターは、戦場を計算可能な数理モデルとして見立て、被害を最小限に抑える優れた指揮手腕を発揮した。周囲がその指揮を褒め称える中、それでも発生してしまった死傷者をドクターは目の当たりにし、戦場が決して数字だけで片付けられるものではないと苦悩する。
そして、テレシスとテレジアの二人は互いに宣戦布告。軍事委員会とバベルとの争いは遂に戦争という最悪の事態へと発展することとなった。
ある時、ドクターは鉱石病感染者が亡くなる瞬間を目の当たりにする。過去、レインボーシックスとの『オペレーション オリジニウムダスト』にて描写があった通り、感染者の死体からは粉塵が吹き出し、やがて光と共に飛散していくのだ。
あまりに衝撃的な光景を目にしたドクターは、次第に大きな葛藤を抱えることになる。そうした苦痛こそ想定していなかったとはいえ、鉱石病の罹患そのものは源石が情報を収集するために必要なプロセスであるため、感染者を救うべく抑制剤を生み出すほど、当初の「源石計画」を阻害することになるのだ。
而是他们顺应了源石同化的进程,通过死亡成为了内化宇宙的局部,成为了生命能够突破终极黑暗的契机。
『巴别塔』BB-7 阴影显现 (筆者訳)
むしろ、彼らは源石と同化するプロセスに順応したのであり、その死を通じて内包された宇宙の一部となり、生命が終極の暗闇を突破するためのきっかけとなったのだ。
オリジニウムダストにおける「一人の感染者が、生まれ育った大地に還っていった。」という表現は比喩でなく、文字通りの意味だったわけである。
鉱石病を遅らせることはできても治療することができないというのは、言い換えると、新たな世界を創り出す「源石計画」の進行を遅らせることはできても、止めることができないという意味でもある。加えてこの「源石計画」は、何百億、何千億という旧人類の命が絶えていく中、何世代にも渡って完成させたものであったため、「源石計画」を阻害することは即ち過去の同胞たちを裏切るも同然の行為。
勿論、一人二人に対して鉱石病の進行を緩やかにするくらいであれば差し支えはないだろうが、これが鉱石病の根絶を果たすとなると話は変わる。言うなればそれは究極のトロッコ問題と言えるだろう。ドクターは、共に計画を築き上げた旧人類の同胞たちと、現在テラに生きる人々とを天秤にかけ、計画の存続を判断しなくてはならない。
ヴィクトリアへと集結した軍事委員会のサルカズたちは、やがて源石の技術を用いてテラ全土へと戦争をしかけるとドクターは予期した。大地へ鉱石病を蔓延させるテレシスの行為は、「源石計画」の観点では歓迎すべき状況である。
テレジアは「文明の存続」を用いて源石を、無害なセラスチュームの花へと転化した。ドクターはそうしたバベルの取り組みに期待したい気持ちを募らせる。その一方で、未だ原始的な政治形態を有するテラの現状では、バベルは決して人種や国家の隔たりを越えるような能力を持てないだろうという諦観もまた、ドクターの心にふつふつと湧いてくる。
テレジアを信じるべきか、止めるべきか。
人類存亡を巡る葛藤。増え続ける戦争の犠牲者たち。
苦渋の果て、心をすり減らしたドクターが下した決断は、バベルを崩壊させることだった。ドクターは軍事委員会の通信を傍受し、密かに暗号を解読。テレシスの行動を把握し、彼が一人となった状況で交渉を仕掛けた。
テレジア含めバベルメンバーの犠牲を最小限に戦争を集結させることを望んだドクターは当初、「ザ・シャード」を用いたヴィクトリアにおける軍事作戦のアイデアを手土産にテレシスへ交渉をする。しかし、それは戦争を終結するだけの理由にはなり得なかった。
数多の命を救いながら戦争を終結させる方法。それはテレジアの命を差し出すことだった。憎しみの果てに生まれた戦争の集結は、バベルメンバー全ての命が失われるか、テレジアの命が失われるかの二択でしかないとテレシスは語る。当然、テレジアはバベルメンバーのために戦うだろう。とすれば、選択肢になりうるのは後者しかない。
バベルの崩壊を招いたテレジア斬首作戦の真相は、ドクターの采配によってバベル側の守りを薄くし、テレジアを殺す軍事委員会のアサシンを招き入れることだった。テレシスとの交渉以後、ドクターの采配はより機械的なものとなっていく。
もし戦火と殺戮がドクターを感化し、ドクターを一人の指導者、研究者から一台の単なる戦争マシーンに変えてしまっていたら……。
『戦地の逸話』無名氏の戦争
Scoutがバベル時代のドクターの眼に見た「勝利への確信」とはつまり、バベルの破壊を腹に決めたドクターの意思であり、仲間たちへの裏切りをひた隠しにした薄暗い心の闇だった。
斬首作戦
ここからは、翻訳ダイジェストで記載。
1094年。
軍事委員会と軍事力の差があったバベルはこれまで、カズデルを包囲することは叶わなかった。しかし、テレシスがロンディニウムへと赴いた今のカズデルには、王庭メンバーの一部しか鎮座していない。各エリートオペレーターを重要な戦略拠点へ配備し、カズデルを制圧する。攻勢に出る以上、必然的にテレジアのいる本艦の守りは手薄になるものの、適切な兵力はドクター指揮のもので管理される。
テレジアは、テレシスらしかぬカズデルの采配に疑問を抱くものの、ドクターの選択を信頼した。ケルシー含め、誰一人としてドクターを疑う者はいなかった。勝利の後で、故郷へと招きたいと嬉しそうに語るテレジアへ、ドクターはどことなく上の空な様子で生返事を返す。
作戦決行の22分48秒前。クロージャは本艦へ連絡を取るが、応答は無かった。通信の復旧を試みる。
作戦決行の12分57秒前。Logosは違和感を覚えた。バンシーには縁を結んだ者へ哀悼の歌を送る習慣があり、Logosの母親もまた身近な人物へ歌を送っていたのだ。彼が察知したのは身近に迫りくる死の気配。
誰かの死を予期したLogosの言葉に、ケルシーは凍りつく。
本艦では、ドクターが船の防御システムを全てシャットダウンしていた。眠っていたアーミヤは奇妙な物音に目を覚ます。怖くなった彼女はテレジアの元へと行き、絵本を読んでほしいと懇願する。
顔を潰し角を折った無貌のサルカズアサシンたちが来たのは、テレジアがアーミヤへ物語を読み聞かせているときであった。テレジアは巨大な泡でアーミヤを守りながら、迫りくる暗殺者たちを次々と迎え撃つ。
多勢に無勢、止めどなく現れるアサシンたちとの戦いで次第に消耗していくテレジア。それでも、泡で視界を塞がれているアーミヤへ物語を語り続けた。
小さな仕立て屋の話(※物語の翻訳に自信がないので折りたたみ)
「それは、絶望の広がる砂漠で希望を探し続ける小さな仕立て屋の話。小さな仕立て屋はたくさんの黒い影から追いかけられてしまう。黒い影は古い古い、絶望と悲しみの木霊。一度彼らに捕まってしまえば、逃げ場は無い。小さな仕立て屋は赤金と宝石で飾られた王に出会う。王は小さな仕立て屋へ、来た道を戻れば計り知れない富が与えられると約束する。しかし、王が引き止めたにも関わらず、小さな仕立て屋は宝石を置き去りにして、前へ進む。
しかし、間もなく――
黒い影は小さな仕立て屋に追いついた。止めどなく、影は仕立て屋に向かい続ける。バン、バン、バン…仕立て屋は針と糸でできた槍を引き抜いて、黒い影と戦った。遂には黒い影の鋭い爪から逃げるため、前に進む。涙でできた大きな川に逃げ込むまで。 船もなく、浮き草もない。小さな仕立て屋は泳いで渡ることしかできなかった……。涙に濡れた仕立て屋は、どんどんと川の底へと沈んでいき――
彼は失敗した。」
不穏な終わり方をする物語を、信じることのできないアーミヤ。
続けて「私も…」と言葉にするテレジアへ、アーミヤはその仕立て屋を救いたいと口にする。
声が消え、泡が消える。
アーミヤが目にしたのは、白いドレスを真紅に染めたテレジアの姿だった。
抱歉,我没有能力改变故事的结局。
『巴别塔』BB-10 再见,再见(筆者訳)
ごめんね、でも私には物語の結末を変えることはできないの。
但是你可以,阿米娅……
でもねアーミヤ、あなたならできる…
幾年もの間、黒き王冠はサルカズたちの血塗られた歴史の中で使われきた。
そんな呪われた運命を断ち切るため、テレジアはサルカズとは無縁の、心優しいコータスの少女へと黒き王冠を継承することを決める。
「物語の終わりを、書きかえてくれる?」
「はい」と口にしたいアーミヤだが、声に出すことはできなかった。代わりに彼女は、テレジアへ不安げに頷く。これでテレジアを救うことができるなら。
虽然我现在剩下的力量能做的不多,但足以将它的权限转移给你。
『巴别塔』BB-9 尘埃落定
今、私の残っている力でできることは少ないけれど、権限をあなたへ移すには十分ね。
我为你封存了它的大部分区域,以免无边无际的信息搅乱你的思绪。
とめどない情報であなたの気持ちを混乱させないよう、大部分の領域を封じ込めておいたから。
王冠の重荷を背負わせてしまったこと、成長するまでそばにいることができなかったことを詫びるテレジア。
テレジアの持つ剣の黒き刃は胸を貫き、アーミヤは叫ぼうとしたが、口を開くことも、手足を動かすこともできなかった。
しかし、アーミヤが感じたのは痛みではなく、希望に満ちた温もり。
「おやすみなさい。私はいつも、あなたとともにいます。」
「文明の存続」を受け継いだアーミヤは眠りにつく。
「アーミヤ!」
聞き覚えのある声に振り向いたテレジアが目にしたのは、数多の刺客を率いたドクターの姿だった。テレジアが最後のサルカズアサシンを倒したとき、黒い王冠はアーミヤの手に渡る。
何十億もの命と幾万年もの時間を犠牲に得たチャンスを、手放せるわけもないとドクターは語る。この地に残る旧人類の亡霊は、テレジアたちバベルが「源石計画」を打ち破ることを、みすみす見逃せることなどできなかったのだ。
アーミヤとケルシーを傷つけてまで、そして信頼していた仲間たちに背いてまで、生命を救う方法がこれだったのかと、自らを裏切った人物へテレジアは問いかける。しかし、テレジアにはわかっていた。目の前の子供が苦しむ姿を見るのは忍びないと、アーミヤを治療していたドクター本来の誠意と純粋さを。
覆われたマスクの下で涙を流すドクターに、私はまだ信じたいと、本来のあなたを信じたいとテレジアは口にする。テレジアはドクターを近づき、マスクを外してその素顔を見る。それは見慣れたような、見慣れない顔だった。彼女はその顔をよく知っていた。
テレジアは微笑み、指を伸ばすと、眼の前の光景がまるで布のように裂けた。そして裂け目から解れた糸をゆっくり引き抜くと、ドクターの記憶は薄れていった。過去に囚われ続ける亡霊を開放するため、テレジアは「文明の存続」を使う。昔、テレシスのそばで裁縫をしていた夜のように、テレジアはドクターの魂が構成する記憶を隅々まで解体する。
記憶の終わりには見慣れたようで、見慣れない背中があった。
それはドクターであり、ドクターではなかった。
預言者
記憶の消去。テレジアにはその経験が不足していた。何が起こるか分からないし、それがどんな危険をもたらすのかも予測できなかったが、彼女が退く余地などなかった。テレジアにとってそれは最後の決断でもあった。
テレジアはドクターの記憶の中を歩く。無数の記憶が絹糸に分解され、消えていった。彼女は見たことのない世界を歩いた。なぜあのような輝かしい文明が終わったのか?なぜ、流れ星のように輝く天才たちは、解決策のないこの終極の問題と戦い続けたのだろうか?抵抗は無意味なのか? 団結することは夢物語なのか?テラの未来は絶望的なのか? 愛した故郷は?愛した人々は?
答えは見つからない。彼女にできることは記憶が飛散した後の、何もない世界を歩き続けることだけだった。
そしてようやく、彼女は見覚えのある人物を見つけた。
次にテレジアが目にしたのは、最初の戦勝を祝うバベルの面々とケルシー、ドクターたちの姿だった。ドクターの時代にはそうして祝杯を上げることはあまりなかったため、バベルのエリートオペレーターたちに祝われ、気後れしながれも談笑を続けるドクター。記憶の中でテレジアは、白いドレスを着た女性が通り過ぎるのを見た。彼女自身だった。
次にテレジア目にしたのは、PRTSにて起動し、映像を記録するドクターの姿。旧人類の文明とテラ文明の狭間で思い悩み、自らの心の中には「私は何者なのか?」と声が響いているのだとドクターは口にする。旧人類を見守る者か、はたまた先史文明の裏切り者か。
もはやドクターには自分自身を認識することができなくなっていた。言うべきことをうまくまとめられず、PRTSの録画を停止し、削除するドクター。
テレジアはためらうことなく、ただ静かにやるべきことを続けた。深く、更に深く、埋もれた記憶に近づいていった。
次に目にしたのは、レムビリトンでアーミヤを救うドクターの姿。アーミヤへ手を差し伸べる光景の途中、記憶は唐突に砕ける。
突然のことに、テレジアは驚く。これが記憶の全てであるはずなど無かった。戸惑うテレジアへ、ドクターの姿をした人物が話しかける。「ドクター?」と呼びかける彼女へ、その人物は答える。
很少有人会这么叫我,他们喜欢称呼我的团队代号——“预言家”。
『巴别塔』BB-ST-3 灵魂尽头(筆者訳)
私のことをそう呼ぶ人はほとんどいない。彼らはよく、私のチームのコードネーム"預言者 “と呼んでいる。
預言者。その人物こそが、ケルシーが信頼を置く存在だった。
ケルシーには申し訳ないことをしたと口にする預言者は、自らが逃れられない陰謀の渦中にいることをテレジアへ明かす。希望を求めて奔走し、裏切りに苦しむテレジアの姿を、預言者はかつての自分自身へと重ね合わせる。
預言者は感情が燃え尽きた残滓であり、そんな状況であなた一人にしておけるわけがないと、テレジアは告げる。その言葉に、終点まで来たのだから為すべきことを為してくれと答える預言者。会えて嬉しいというお互いの言葉を最後に、預言者はどこまでも続く麦畑に向かって歩き、その中へ消えていった。
やがて、別れのときを悟るテレジア。未来でまた会おうねケルシー、アーミヤ。そう言葉にし、テレジアは希望に向かって歩みだした。
そして、死に向かって。
魔王、文明の存続
記憶の解体を終えたテレジアは、眼前の人物の手を取る。二人はまるで初めて顔を合わせたときのようだった。その瞳に目を合わせ、瞳の中に絶えず移り変わる感情を見て、やがて虚空だけが残るのを見た。記憶の解体はドクターに向けたささやかな復讐であり、最後の贈り物でもあった。
これからは過去の記憶に囚われることなく、本来の姿で。再びテラの大地に生きて、世界を見て回り、喜びや悲しみを感じ、様々なテラの人々と出会い…。きっと、ドクターの旅は苦しみの中から始まる。大地の薄暗い月影から離れられずとも、太陽が昇るのを見ることができる。
テレジアの耳には、バンシーの歌声が響いていた。
本艦へ駆けつけたケルシーの眼前に広がった光景は、全てが終わった後のものだった。床に倒れるアーミヤ、ドクター、そしてテレジアの姿。こうなる可能性は分かっていたのに、戻ってくるのが遅すぎた…止めどなく溢れる後悔の念。未だ作戦は終わっていない。声にならない声でMon3trへ命令するケルシーの耳に、「ケルシー、ケルシー」と彼女を呼ぶ声が響き渡る。
声の主はアーミヤだった。目を開けたアーミヤの瞳孔には、ひし形の文様が浮かび上がっていた。
テレジアは目を覚まさない。しかし、ケルシーには分かっていた。それが彼女であると。残されたケルシーに、今あなたが見ているのは王冠に残した意識で、別れを告げるためにこの子の身体を借りたのだと、彼女は語りかける。
自分を責めないで欲しいと、あなたにはあなたの使命があるとテレジアは語る。続けて、ドクターを殺したこと、そして救ったこと、私たちはドクターを信じたのだから、これからも我々の道を進んで欲しいと、彼女はケルシーに語りかける。
この後のことはアーミヤに委ねた。彼女は困難な道を歩むことになる。王冠をアーミヤへ授けたこと、それは負の連鎖を断ち切り、来るべき未来に備えること、魔王はサルカズの魔王とはなり得ないし、またテラの魔王ともなり得ないのだと、テレジアは続けて語る。
鍵となるのは「文明の存続」。今すぐアーミヤへこのことを伝える必要はない。道を進んでいく中で、彼女は理解するだろうし、理解する必要がある。大地の門に通じる扉を見つける唯一の方法は、あらゆる困難に打ち勝つことだ。
ケルシーは問いかける。「君は…?」
私は理想の中に消えていく。でも彼女は……朽ち果てる全てを、燃やし尽くす炎となるでしょう。
「アークナイツ」ティザーPV4
魔王テレジアが命を落としたことをサルカズたちは悟り、戦争は終結する。
補遺
ここからは考察…というよりも、憶測に近いので注意。
斬首作戦の後、意識を失ったドクターは石棺へと戻され、ケルシーはウルサスの知人を通じて、チェルノボーグへ安置することを決める。
ケルシーは、ドクターの記憶が解体する瞬間を目にしていなかったことに加え、テレジアもただ「ドクターを殺して、救った」としか伝えなかったことから、メインシナリオ開始時点の彼女にとってドクターが本当に記憶を失っているのかどうかは確かめる術が無かった。本当に記憶を失っているのかどうか、状況から察することしかできないのである。
ドクターが初めてプリースティスの名前を尋ねたとき、ケルシーはキョトンとした表情を浮かべていたがその際、本当に記憶を失っているのだと、彼女は確信することにとなったのかもしれない。時を重ねるごとに、ケルシーの態度は徐々に軟化していくが、自らに道を示し名前を授けてくれた預言者としての記憶までドクターは失っているため、それはそれで複雑な思いだろう。たまにドクターに対して君自身の道を~といった旨の発現をしているが、これは預言者がケルシーに対して伝えた言葉そのものである。
預言者という表現は、VIGILO、そしてエンドフィールドにも登場する。
そういやあ、あんたをどう呼べばいい?管理人?オラクル?それともドクターか?
『アークナイツ:エンドフィールド』ティザーPV 01
日本語では「オラクル」となっているが、中国語表記では「預言家」となっており、今回登場した単語と合致している。今回のイベントでは「タロⅡ」という単語が登場しており、動物の姿をしたエーシェンツたちはタロⅡの生物たちがテラに来てから源石によって変化したと語られている。
エンドフィールドが無印アークナイツより未来の話であることを踏まえると、テラから「転送門(CN:传送门)」を通じて再びタロⅡへ戻ったと言えるのかもしれない。ペリカの脊椎に源石の技術が使われているが、源石にはこれまで取り込んできた情報を再現する性質があることを踏まえると、鉱石病とはある程度折り合いをつけて源石と”共存”しているのだろうか。
加えて注目したいのが預言者が「チームコード(CN:团队代号)」であるという点である。本イベントにおいてドクターは、「源石計画」を進めなければいけない亡霊としての一面と、テレジアを信じたいという預言者としての一面が、黒文字のフォントと白文字のフォントで描き分けられていた。突飛な発想かもしれないが、個々の人格ではいずれ破綻してしまうことを予期して、預言者としての人格を複製していくつかの身体へ移植していることはSF作品という観点で考えてみるのも面白いかもしれない。そうすると、エンドフィールの主人公も預言者(オラクル)の人格を埋め込んでいるというわけである。
また、ケルシーが「Ama-10」というプロジェクトから生まれたことは先の項で記載した通りであるが、「源石計画」を進めていたプリースティスは「Ama-10」に個人的な創作(CN:个人创作)を加えたことが、ケルシーが人間らしい感情を抱くきっかけとなる。
このあたりはElさんのツイートが参考になるかもしれない。
アークナイツシナリオである意味名物なっている長文の語り口調、いわゆる”ケルシー構文”は今回のイベントでは一切見られず、不器用に振り回されるのがケルシーの役回りだった。唯一対等に話し合えるテレジアを失ったこと、そして頼れる人物が他にいなくなったことでケルシーは覚悟が決まり、以後ロドスにおいて非常に頼りがいのある役割を果たしていくことになる。
また、ドクターであるが、『VIGILO-我が眼に映るまま』で示されたように膨大な情報を元に与えられた状況に対して最適解をくだすのが得意な人物であることが窺える。故に、旧人類時代の膨大な情報は却って彼の判断を鈍らせ、テレシスとの交渉が煮えきらないものとなってしまった原因でもあるだろうか。ただこれについては「テレシスに道を示したことが重要」ともドクターは述懐しており、やはり旧人類を優先する亡霊に成り果ててしまったのかもしれない。
その意味ではテレジアが、ドクターの記憶(亡霊)を解体したことはまたとない贈り物であり、事実、その後のイベントでは「ドクターさえいればなんとかなる」という状況が続いている。また、テレジアはドクターの記憶を消去するのではなく、解体している。たまにプリースティスたちのことを思い出すのは記憶が失われていない証左であり、今後のシナリオで再び過去の自分を思い出す可能性を示すものでもある。
本イベントにて、ドクターは結局自分はテラ人でないのだと孤独に苛まれていた。テレジアは記憶を解体することで、まっさらな状態でテラ人として歩む、未来のドクターを信じた。
然后,我相信,你会重新得出一个答案。得出真正属于你的答案。
『巴别塔』BB-10 再见,再见 (筆者訳)
そしてきっと、もう一度答えを導き出すことになるでしょう。本当に、自分らしい答えを。