【アークナイツ考察】獣主について、狼主たちのゲーム
この大地のいかなる生物とも異なり、生まれ落ちることなく、ただ自らの存在を示す者。
シラクザーノ IS-ST-2 切開
獣主は、動物の姿を持ち、人の言葉を話す知的生命体。数千年に渡って生きていることが明かされており、テラ世界における多くの人々とは一線を画す描写がなされている。
テラ世界には駄獣という名の動物たちが生息している他、イェラガンドや歳獣のように古くより根付いてきた”巨獣”と呼ばれる神話生物も存在するが、獣主たちはそのいずれの存在とも異なる。
獣主として扱われるキャラクター
獣主はエンペラー、大祭司、狼主と、名前には集団を統率する首長を冠した名前が用いられる。
獣主として数えられるキャラクターについては、ルナカブのプロファイルに記載あり。
エンペラーや大祭司は「変わった姿をしたリーベリ」ではないし、ザーロやアンニェーゼも「神出鬼没のループス」ではない。ヴィーナの傍にいるのも、歴史に刻まれたアスランの誰かというわけではない。
ルナカブ第四資料
レッドが口にする”オバアサン”も、ザーロやアンニェーゼといった狼主の一体であると推測される。
「ヴィーナの傍にいる」のは11章に登場したライオン、ガウェインのことであり、彼はアラデルとヴィーナの再開を予言する獣主として描かれていた。
その他、統合戦略に登場するダッグ卿も獣主として数えられる。
明言こそないものの、統合戦略『ケオベの茸狩迷界』の隠しルートに登場した三頭犬は「誰もそれの姿を見ることが出来ない」と説明があり狼主同様、不可視の能力を持つことから獣主の一種か。
外見的特徴、役割
テラ世界に住む大多数の人々は、現実世界の人間をベースとしながら、身体の一部が動物の特徴を模しており、モチーフとなった動物に近い特性を持つ。それに対して獣主は、現実世界の動物そのままの姿をしている。
ダッグ卿が描かれたスチルには、次のようなフレーバーテキストが存在する。
このように表現するのは適切でないかもしれないが、世間一般の概念で定義付けるのであれば、彼らはきっと雇い主と従業員の間柄になるだろう。
統合戦略 獣主と従者
このスチルは「獣主と従者」という名前であり、ゴプニクの詳細説明文に「ダッグ卿が雇用しているウルサスの護衛」と表記があることから、ダッグ卿が獣主であることが分かる。
「シラクザーノ」で明かされた内容によると、獣主は親から生まれるという概念が存在しない。ルナカブのプロファイルには、獣主が大地の裏側に偏在していることが仄めかされている他、次のような記述がある。
あれらは時に、「獣主」と自称する。だが、何らかの主宰者では断じてない。それだけは私が保証する。
ルナカブ第四資料
日本語だと意味を捉えにくいが、原文では「主宰(=支配)」、ENでは「they rule over nothing(=彼らは何も支配しない)」と表記されていることから、獣主たちがテラ世界の「支配者」ではない、と説明されている。
能力、性質について
獣主の特徴の一つとして挙げられるのが、圧倒的な長寿であることだ。
ありゃあ、ここ三千年で一番つまんねえ毎日だったぜ!
シラクザーノ IS-10 「狼の主」
「シラクザーノ」においてエンペラーは、狼主たちが何千年も闘争を繰り広げている現状に辟易としてしている様子が描かれている。
他、獣主たちは不死性を持つ。
狼の主、そして獣の主。それは不死にして不滅なるものだ。
シラクザーノ IS-ST-2 幕間 切開
「喧騒の掟」では、鼠王によって殺されたエンペラーの死体が投げられる描写があるものの、何食わぬ顔でその後シナリオへ登場した。
「密林の長」における大祭司もまた、似たようなニュアンスで周囲から呆れられている。
だって大祭司様は、どんなに飛ばされてもピンピンして帰ってくるだろ。
帰還!密林の長 RI-7 戦闘前 先客
ルナカブのプロファイルによると、獣主は動物的本能に似た原始的な衝動があり、彼らの在り方へ影響を及ぼしているという。例えば、シラクーザにおける狼主たちは闘争本能に従い、自らの定めた人物を「牙」として支配し、その人物たちへ代理戦争をさせる。
しかし、獣主の中でもこの衝動に打ち勝っているものがあり、エンペラーこそがその一人である。
狼主たちのゲーム
「在りし日の風を求めて」では、シャマレによってシラクーザの成り立ちが語られた。
昔、ある部族が七つの丘に囲まれた渓谷で暮らしていた。
在りし日の風を求めて 天空の物語
部族の領主の母狼には六人の子供がいた。母狼と子供たちはそれぞれ一つの丘を縄張りにして、餌を巡って争いあった。百年後、子供たちはそれぞれ自分の群れを確立し、これまで通り争いを続けていた。
部族の領主の母狼には六人の子供がいた。母狼と子供たちはそれぞれ一つの丘を縄張りにして、餌を巡って争いあった。
狼主たちは、自らの血脈に流れる衝動に従い、競い合う。競い合った末にリーダーを定め、長い時間を経てまた次のリーダーを決め、更に次の…という不毛の行為を繰り返す。先述のように、獣主である狼たちは死ぬことがないため、各々が人間を選び狩りをさせるというゲームを作り上げた。
その選ばれた人間は「牙」と呼ばれ、牙たちも狼主同様に本能に囚われる。ケルシーを含むロドスの面々がレッドに対して衝撃を緩和しようと試みているが、アンニェーゼによると決して容易なことではないという。
「シラクザーノ」終盤でリュドミラ(クラウンスレイヤー)を待ち受けていたものは、リュドミラの先生である「真狼」を葬った後のレッドとの再開だった。
ベンによると、牙たちはいずれもどこかしらの組織を拠り所としているという。「シラクザーノ」においては、狼主ザーロがベッローネ・ファミリーを牙として選別しており、その勝利を確実なものとするために、龍門からチェリーニア・テキサスを呼び寄せた。
他の狼主たちは荒野の中で暮らしているが、ザーロだけは人間の権力を一種の力と見做しているため、狼主たちの中で唯一人間社会と繋がりを持つ存在となった。ザーロがベルナルドに期待したのは、現在シラクーザを統治しているミズ・シチリアへ反旗を翻すことであり、彼女に変わってベッローネ・ファミリーがシラクーザにおける真の権力者に成り代わらせることで、ゲームの勝者となることを画策する。
しかし皮肉にも、自身が教え込んだ「裏切り」により、ザーロの計画は潰えることとなる。本能から生まれる衝撃によりゲームを繰り返してきたザーロにとって権力とは、大地全体を隷属させることに他ならなかったが、ベルナルドの考えた権力は、時代を牽引するもの。その未来として描いたものはファミリーの存在しないシラクーザであり、マフィアなくして機能する世界だった。
レオントゥッツォとの対話を果たしたベルナルドは狼主ザーロによる支配から免れるために、自ら命を絶ち、シラクーザの行く末を息子へと委ねた。その行為に激昂したザーロは、人間のことには干渉しないというルールを破りレオントゥッツォの殺害を試みるものの、エンペラーに率いられた狼主たちによって遂に自ら頭を垂れることとなった。
その後ザーロは三ヶ月に渡り、荒野を放浪していたラップランドへ目をつけ、支配下におこうと戦いを挑み続けるものの、決して折れないラップランドに新たな可能性を感じる。牙として育てるのではなく低頭することを決めた彼は、ラップランドに寄り添う。そうして、新たなシラクーザシナリオの始まりを予期させる形で、「シラクザーノ」は幕を閉じた。