【アークナイツ考察】ミズ・シチリアについて
このまぶたが閉じられる瞬間まで、シラクーザは私がもたらす安寧を享受することでしょう。
シラクザーノ IS-10 戦闘後 「狼の主」
ミズ・シチリアとは、テラ世界の国家シラクーザの統治者であり、マフィアたちのファミリー十二家から成る円卓会議、グレイホールの創設者でもある。
秩序と粛清の歴史
最初にミズ・シチリアの名前が登場したのは、「喧騒の掟」におけるラップランドの台詞。
キミたちが誇りにしていた栄光と歴史を奪ったあの……ミズ・シチリアご本人は、それを許したの?
喧騒の掟 CB-EX2 戦闘後 南轅北轍
大陸版生放送で明かされた内容によると、元々シラクーザはリターニアの属国であった。その後、リターニアから独立を果たしたシラクーザはテラ歴999年、マフィア十二家が管理していた二十ニの都市を領土とし、現在の国家になった。
テラ歴1039年、マフィアによる抗争が激化していたシラクーザはラテラーノから「銃と秩序」を持ち帰ったミズ・シチリアによって、暗黒時代と呼ばれていた状況は一変する。この「秩序」とは、ラテラーノにおける”法”とは意味合いが異なり、アグニルと共にミズ・シチリアが定めたルールを意味する。
銃は力であり、秩序はルールだ。
シラクザーノ 個別行動 アグニル
統合戦略における秘宝「教母の印」はミズ・シチリアの秩序の象徴とされており、「蠢く欲望を制圧し、闘争を禁ずる」と記載がある。
ENにおいてこの秘宝は「Godmother’s Token」と訳されている。元々「godmother」とはキリスト教の洗礼において子供の後見人となる女性を指す言葉だ。しかしながら、マフィアの蔓延るシラクーザにおいて統治者であるミズ・シチリアを指し示す言葉であることを加味すると、もう一つの意味合いが含まれる。
アメリカ映画『The Godfather』で知られる通り、「godfather」とはアメリカにおいてマフィアの首領(ドン)を示すことがある。似た意味の単語には「ボスの中のボス(伊:Capo Di Capi)」があり、こちらも裏社会全域へ大きな影響力を持つボスを指す言葉として知られる。
ミズ・シチリアは圧倒的な実力によりファミリーたちを統治下に置き、十二家から成る円卓会議、グレイホールを設立した。その際、シラクーザへ平和を維持するために「皆殺しを禁ずる」という掟を定めた他、裁判所を設立することで十二家の闘争を監視し、防止する仕組みを作っている。
「政府というのは、グレイホールの円卓に敷かれたテーブルクロスのようなもの。」
シラクザーノ IS-8 戦闘後 累卵の危機
この言葉はテラ歴1069年、シラクーザをマフィアの支配から解放することを夢見た若者たちが、粛清された際に広まったミズ・シチリアの言葉である。ルビオの話から察するに、「秩序」を乱したことで市政府が根こそぎ粛清されたことを暗示しており、その強制的な人員の入れ替えをテーブルクロスに例えたものだと解釈することができる。
テラ歴1092年、チェリーニアの父ジュセッペが、チェリーニアの祖父サルヴァトーレを殺害し、シラクーザマフィアの枠組みを抜けることを宣言した。それに激怒したミズ・シチリアは、マフィアたちを通じてテキサス・ファミリーの粛清を行う。
上述のように「秩序」を乱す者は、例え一般市民だろうとマフィアだろうと、ミズ・シチリアは容赦しない。正確な年代は明かされていないが、元々シラクーザで活動していたシチリア連合もミズ・シチリアによって粛清されたこと「喧騒の掟」におけるラップランドや「シラクザーノ」におけるディミトリの台詞から窺える。
シラクザーノにおいて
前日譚となる「未完の断章」では、ミズ・シチリアはラップランドへ手紙を送っている。それは、ミズ・シチリア配下組織である「巨狼の口」へ誘う内容であった。理由は詳細に語られていないものの、ランチへ誘ったり、ミズ・シチリアの意志の代行である裁判所へトラックへ突っ込んでも咎めないなど、ラップランドに対する扱いが特別なものとなっている。
「シラクザーノ」本編での動きはラストシーン以外あまり目立ったものはないが、十二家の闘争沈めるために直接ウォルシーニへ出向いた他、ジョヴァンナの面倒を見るためにアグニルを派遣したり、レオントゥッツォが描く未来へ理解するためにベンへ意見を求めるなど、若者へ目を配りながら自らの足で情勢を見極め、冷静な判断を下すことのできる為政者としての姿が描かれている。
狼主たちのゲームについては時代遅れだと一笑に付し、それほど気にかけている様子は無い。
物語の終盤、ミズ・シチリアはレオントゥッツォに対して、今日までシラクーザを築いてきた自らの考えを端的に述べる。一件すると、レオントゥッツォから提案された新都市の運営について理解を示したような印象を与えるが、より詳細な彼女の本心は、アグニルの個別行動にて語られている。
後継者たちを育てる中で、一つの結論に至ったのです。平和な時代には、次のミズ・シチリアなど生まれてはこない、と。すべてのマフィアを服従させたいと思う時、私の心には野心と情熱しかありません。そして、今日までこの国を管理した私は、シラクーザに情を抱かずにはいられません。私は全力で彼を叩き潰しましょう。
シラクザーノ アグニル個別行動
その上で、彼が本当に成功したその時は……まま成し遂げさせてあげましょう。
冷徹な統治者であるような印象を与えるミズ・シチリアであるが、内に秘めた感情はかなり情熱的なものである。
ミズ・シチリアはグレイホールにて相対する4人の若者を見据え、シラクーザの行く末を試す旧時代の番人として、ただ微笑みを浮かべた。