【アークナイツ考察】使徒について

使徒とは、サルカズの医療組織「聴罪師」の元メンバーであるシャイニングによって結成された感染者援助団体。メンバーはシャイニングナイチンゲールニアールの3名。

3人の出会い

元々、シャイニングは同じ「聴罪師」に所属していた人物に憧れを持っていたが、ある陰謀をきっかけに疑問を抱くようになり、組織を後にする。

かつて……光り輝く人を追いかけていました、その輝きが陰謀によって潰えるまで……。今度こそ、この輝きは消えさせません……たとえ命に換えても……。

シャイニング信頼上昇後会話3

リズ(ナイチンゲール)は、サルカズの内戦によってその戦火の被害者となったばかりでなく、鳥かごと形容される檻に投獄され、神経に作用する薬剤を投与され、治療を強要され、その身体は重度の鉱石病と記憶喪失、身体機能損失に蝕まれることに。

シャイニングはそんなリズを救出し、彼女の治療法を探すための旅に出る。旅の途中で、シャイリングとリズの二人は、騎士競技に優勝しながらも感染者だと糾弾されたことでカジミエーシュを追われたマーガレット・ニアールに出会う。

ニアールを迎えた「使徒」のエピソードは、ナイチンゲールの回想秘録で語られており、シャイリング・リズの二人がリターニアで差別を受けるサルカズであることから、その善意とは裏腹に患者からの不信に苦労する様子が描かれている。

やがて、三人は感染者の諸問題を解決する製薬会社ロドスの噂を聞きつけ、オペレーターとして採用されるに至った。

ニアーライトにおいて

シャイニング、リズ、マーガレットの3人は血の繋がりがあるわけではないが、その絆の固さは家族以上とも言える。自らの過去にけりをつけるべく、かつての同僚たちに迷惑をかけることのないようロドスを辞めたマーガレットであるが、最終的にシャイニングとリズの二人には頼ることとなった。

自らを追放したカジミエーシュで孤独な戦いを強いられるマーガレットにとって、シャイニング・リズはこの上なく強力な精神的支柱であり、虚飾に彩られた騎士競技に臨む彼女に「私はもう、一人ではない。」と確信を抱かせるに至っている。

戦闘面においては、車いすに頼るリズをカバーする必要があるためチームとしては一見ハンディキャップがあるように見えるが、豪速で飛来する無冑名最上位クロガネの不意打ちを防ぐマーガレット・シャイニングの実力に加え、リズも敵のアーツを跡形もなく消し去る「聖域」を展開できることから、並大抵の部隊では相手にすらならないことが伺える。
※ロイや遠距離にいたクロガネは気づかなかったが、モニークはリズの実力について察したような描写がある。

物語の終盤、マーガレットはカジミエーシュへ残ることを決め、シャイニングとリズの二人は過去の怨恨を断ち切るべくヴィクトリアのロンディニウムへ向かったことから、一時的に「使徒」メンバーは別々に行動を取ることとなった。

「使徒」の由来とロゴについて

大陸版は日本語と同じく「使徒」、EN版では「Followers」という訳語が使われている。

「使徒」とは、狭義にはイエス・キリストに選ばれた福音を宣べる十二使徒を指し、広義には特定地域に初めてキリスト教を伝えた人物や宣教活動に大きく寄与した人物を指すこともある。原義としては、ギリシャ語apostolos「派遣された者」「使者」を意味する単語の翻訳。

キリスト教徒の多い英語圏で悪魔をモチーフとするサルカズ二人が所属する組織を「使徒」とするのは問題があったのか、EN版では「apostle」ではなく「Followers」という単語が充てられている。

数ある考察の一つに、サルカズのモチーフはユダヤ人ではないかとするものがある。イエス・キリストを信じたヘブライ人(ユダヤ人の先祖)は、悪魔の犬としてローマ帝国から迫害を受けたことがあるため、天使モチーフのサンクタではなく悪魔モチーフのサルカズが「使徒」という名を冠するのはそれらの事情に関連すると推測できる。
※このあたりはラテラーノイベントにて明かされるエピソードも参照する必要があるため、割愛。

騎士であるニアールが「使徒」に所属しているのは、かつて中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会「テンプル騎士団」を意識したものか。テンプル騎士団の紋章には、一頭の馬に跨る二人の騎士が描かれている

使徒のロゴは、ロングソード、ブドウの葉、そしてウロボロスの3要素で構成される。

まず、ロングソード(バスターソード)は騎士であるニアールを象徴するものだと推測することができる。ロングソードは西ヨーロッパで使用された刀剣の一種であり、中世後期には馬上で用いるために伸長した剣であるという説が存在する。

14-16世紀にかけて作られたロングソードは、鋼が用いられ軽量であることから、馬に乗って戦う騎士たちに愛用されたという歴史がある。その形状から、宗教的な意味合いを見出し十字架として見立てられることもあり、武器としては高位のものが使う例も散見される。

剣の鍔に絡まる幾何学的な紋様はブドウの葉に似ており、ツルが絡み合う様子は歪曲したブドウの枝を思わせる。旧約聖書では、ぶどうの木は神に植えられたイスラエルの象徴となっており、ぶどうの木の下に座すことは平和と繁栄を意味した。

先述の十二使徒という文脈で、新約聖書からこの意味を解釈するための文章を引用する。

「わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。わたしにつながっていながら、実を結ばない枝はみな、父が取り除かれる。しかし、実を結ぶものはみな、いよいよ豊かに実を結ぶように手入れをなさる。わたしの話した言葉によって、あなたがたは既に清くなっている。わたしにつながっていなさい。わたしもあなたがたにつながっている。ぶどうの枝が、木につながっていなければ、自分では実を結ぶことができないように、あなたがたも、わたしにつながっていなければ、実を結ぶことができない。わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。人がわたしにつながっており、わたしもその人につながっていれば、その人は豊かに実を結ぶ。わたしを離れては、あなたがたは何もできないからである。」

日本聖書協会『新共同訳 旧約聖書続編つき』 ヨハネによる福音書15章1-5節

実を結ぶというのは必ずしも、物事が順調であったり成功する様を表すわけではなく、一人ひとりの人生に当てはめたときにその与えられた生をその人なりに謳歌することを指すと解釈されることがある。イエスは神を農夫であると言う。神は大地を耕し、豊かな恵みと祝福を世界にもたらすことで、その地に神の木が育つことになる。

尾を飲みこむ蛇は古き象徴の一つであり、「ウロボロス(古代ギリシャ語:ουροβóρος)」と呼ばれる。蛇は、脱皮して成長することや、長期に渡る飢餓にも堪えうる生命力を有していることから、「死と再生」の象徴とされる。その蛇が自らの尾を噛むことで、始まりも終わりも無い「完全なもの」としての象徴が備わる。

循環性、永続性、始原性、無限性、完全性…と意味するところは枚挙に暇がなく、多くの文化・宗教で用いられてきた。

聖書においては、蛇は人を堕落させた象徴であり、黙示録においてはサタンと同一視される。その点に着目し、シャイニングの前身となる「聴罪師」を意味すると解釈することもできる。

聴罪師とは、ゆるしの秘跡(洗礼後に犯した罪について、悔い改め、司祭に告白することによって神と教会から与えられる罪の赦し)の典礼において罪の告白を聴き、赦免を与える司祭を指すが、アークナイツにおいては摂政王テレシスに使える従者としての一面が描かれている。

前述の解釈に則るならば、ロングソードがウロボロスを断ち切ることで、シャイニングの過去である「聴罪師」に対して訣別を図るということが、ロゴに含まれた意味の一つだと考えることができるだろうか。

他方、ロゴをよくよく見ると、ロングソードはウロボロスを断ち切っているわけではなく、剣に絡まっているようにも見えるため、別の観点でも考察を進めてみる。

ウロボロスではなく、単一の蛇であることに着目するならば、医神として今なお医学の象徴敵存在とされるアスクレピオスの杖であるとも解釈をすることができる。アスクレピオスの杖は、WHO(世界保健機関)のロゴにある杖の由来ともなっている。

ケイローンによって育てられたアスクレピオスは医学の才能を示し、その実力は師を上回るほどであった。アテナから受け取ったメデューサの血を用いることで、遂には死者をも生き返らせることを可能としたアスクレピオスは、冥界の王ハデスから、自らの領域から死者を奪う「世界の秩序(生老病死)を乱す」存在として敵視され、やがて人間が治療術を獲得して互いに助け合うことを良しとしなかったゼウスはハデスの抗議を受け入れ、雷霆を持ってアスクレピオスを撃ち殺すこととなる。

しかし、アスクレピオスはその功績が認められ、死後天へと上げられたことでへびつかい座となり、神の一員に加えられたというのが、ギリシャ神話におけるアスクレピオスの物語だ。

ロドスの伝道者

シャイニングのプロファイルには、ケルシーが冷静にシャイニングを観察し、見極めようとする様が記されている。

では、彼女はいったい「どちら側」の者なのか。

彼女は「聴罪師」をただのサルカズの医療組織というが、実体はそうではないだろう。再び「聴罪師」が何か事を起こした時、彼女がそれを見て見ぬふりするか否か、我々との共闘を選ぶか否かは、今後の我々との関係次第だ。

シャイニング第四資料

この問題を解決する術についてケルシーは、ドクターがシャイニングからの信頼を勝ち得るかどうかと結論づけていたが、その答えの一端がニアーライトによって開示された。

シャイニングは、ヴィクトリアへ足を運ぶことを決め、上述の「見てみぬふり」などは感じさせない決意を口にしている。

「使徒」がロドスと協力関係を築いだ理由は、戦争によって引き起こされる悲劇に抵抗し、より多くの感染者を治療し、医療の助けとなることが実現できると判断したからだ。この意味において、「使徒」はロドスと協定関係を結ぶ他組織と異なり、ロドスの支部に近しい位置づけではないかと推測することができる。

テンプル騎士団、ドイツ騎士団と共に、中世ヨーロッパの三大騎士修道会に数えられる「エルサレム、ロードス及びマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会」、別名ロドス騎士団は、主に負傷者や巡礼者に対して医療を行うヨハネ病院を拠点としていた。

次第に、騎士団は巡礼者の護衛としての役割を果たし始めたことで、軍事組織へと発展することになったが、その根底には常に医療慈善団体としての性格を維持していた。

ロドス騎士団が主に聖地巡礼に訪れたキリスト教徒の保護を任務としていたことにインスピレーションを得るならば、十二使徒を指すことのある「使徒」の目的は「伝道」であり、シャイニング・リズ・マーガレットの三人は、アークナイツにおけるロドスの信念を伝えるためのエヴァンジェリストとなるのだろうか。

十二使徒は正義と信仰のために、自らの命を危険に晒すことを厭わなかった殉職者たちだ。

カジミエーシュを照らす騎士であることを選択したマーガレットは、正しくロドスでの経験によって固めた信念を広める伝道者であるといえ、シャイニングやリズたちも己の過去に決着をつけることで、ロドスの信念を伝える存在となっていくのかもしれない。

わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、信仰を守り抜きました。今や、義の栄冠を受けるばかりです。正しい審判者である主が、かの日にそれをわたしに授けてくれるのです。しかし、わたしだけでなく、主が来られるのをひたすら待ち望む人には、だれにでも授けてくださいます。

日本聖書協会『新共同訳 旧約聖書続編つき』 テモテへの手紙二 4章7-8節

参考リンク


明日方舟使徒原型介绍 使徒背景考据分析
http://www.paopaoche.net/sj/164076.html